クリーニング屋

今日も街に出なかった。


金曜日はみんな浮かれてるのだろうなぁ。
それなのにこのポツンとした感じ。ボッチですな。


そういえば、近所にクリーニング屋さんが2つある。
1つは店の正面がガラス張りになっており、白い蛍光灯で照らされた店内は
清掃が行き届いており、清潔感が溢れているのが外からでもわかる。
しかも、ワイシャツはいくら、スーツはいくら、のように金額も明示されていて安心できる。
チェーン店らしく、お客さんが何を求めているかよく考えられているのだと思う。
もう1つの店は、お茶っ葉屋さんの隣にあるのだけど、一見、何の店か分からない。
店の上には、ずいぶんと色あせた、元は赤色であったであろう文字にクリーニングと
書かれているから、たぶん、クリーニング屋さん何だろうなというのが分かる程度である。


店の横幅はたたみ一畳分くらいで、ガラガラガラと扉を横に引いてあける。
80歳くらいと思われる白髪のおじいさんと腰をくの字に曲げたおばあさんが座ってぼーっとしている。
店内に入ると、おじいさんは「あーいらっしゃいませ!」と元気にあいさつする。
遅れておばあさんは顔をあげる。優しい顔。
このスーツをお願いしたいです、と伝えると
「あーわかりました。すぐに出来ますよ。ウチは早いですから。
一日でできますから!しかも、安いんですよ。」
と自信満々に答える。たしかに安い。以前にも利用したことがあるのだけど、仕上がりも丁寧だ。
そうして仕上がり日を確認して、名前と住所を伝える。
どうやら会員管理のようなシステムはないらしい。
カードを作りますか?と聞かれることはないから。
もう何年も地元で働いているのだろう。住所を言うと、
「あー、あの辺ですか。あの辺はひろいですからねぇ」
と地元トークが始まる。おばあさんも混ざってくる。


きっと、もう働かなくても生きていけるのだけど、
人と話すのが楽しくて働いてるのではないだろうか。
私はこういう店が好きだ。人と話すことは楽しいんだ!という気持ちが伝わってくるから。
他方で、もう1つのチェーン店の方は目も合わせず、はい、仕上がりは何日になります、だけだ。
そんなの、人じゃなくてもいいじゃないか。
でも、ガラス越しに見える店内には仕上がった多くの服が
店の奥にかけられているのが見てとれる。
なんでかなぁ。値段は安いのに仕上がりも良く、話すのだって楽しいのに。
店の面構えもあるし、毎回、住所を言うのが面倒なのかもしれない。
でも、もしかしたら、話すのが面倒な人がけっこういるんじゃないかなー。


もったいないぞ! 人と話すのは楽しいことだぞ!
って思いをストでぶつけようと思うのだった。