メンテメールからのデート 前編

地震や台風があると、連絡が途絶えた女の子たちに
メールを送る。いわゆるメンテメールだ。
送る内容はいたって簡単だ。

「すごい雨だね。大丈夫だった？」

そのメールから、しばらく前に番号を聞いた子と
デートの約束を取り付けた。
もう二度と会うこともないかな、と思っていたので
メールが返ってきた時は意外だった。

待ち合わせは夜の８時。
家の近くの映画館に向かった。

映画デートほどつまらないものもない。
『パーソナルスペース』に入ることができ、
暗闇のなかで黒目が大きくなり、
アクション映画で『つり橋効果』が生まれ、
ドキドキした気持ちを相手に対しての好意と取り違える。
しかも、「２時間話さなくていい」映画デートはあざとすぎる。
まだ相手のことを全く知らないのに、話さず隣に座っているだけなのが
もったいなく感じる。

にもかかわらず、映画鑑賞を承諾したのはフツーっぽいデートがしたかったからだ。
最近のデートは、どうやったらセックスまでたどり着けるか考えていた。
レストランを予約し、あたりさわりのない会話をし、ラブホか自宅の近くへ誘う。
いつもと違うことがしたくて、ノープランでデートをしたのだ。

無事に２時間が過ぎて駅へと向かった。
ところが、女の子からなにか飲みたいと提案があった。

「なにか飲みたいな(^_^)」
「そうだね。うちで飲む？近いし。そういえば、めちゃおいしいシャンパンあるよね、
あれなんだっけ、なんていうんだっけ？」
「えー、なにー？」
「あれだよ、あれ。それ飲も。おいしいから。」
「えー、気になる（笑）飲むー。」

明日も仕事だから帰るつもりでいたのだけど、
せっかくだから飲むにした。
コンビニでおつまみとお酒を買って家に向かう。
私は思った。今日はノープランだったけれど余裕で頂いたな、と。
だが、世の中はそんなに甘くなかった。

家ではDVDを観ながら、ほとんど会話のないまま時間が過ぎた。
女の子には友達から電話が何回かかかってきて、
どうやら地元の友達とご飯の約束をしているようだった。
家には来ていたけれど、あまり私に興味はない気がした。
そんなわけはない、家まで着ておいて、興味がないなんて
ありえないと自分に言い聞かせていた。

気づくと１時をすぎていた。私は気付かなかったけれど、
女の子は何度も携帯をなぶっていたので知っていたはずだ。
だが、きっちりと建前をつくってくる。

「もう帰るね。」
「とまっていきなよ(^_^)」
「いい。ほんといい。帰る。」
「・・・。」

建前ではなかった。

キィーーー、バタン。

こういう時、女の子の身支度は
普段の行動からはとても想像できないほどに早い。
気づいたらバイバイも言わず去って行った。

酔いがまわっていた私はドアの閉まる音がずいぶんと遠くから聞こえた。
眠かったので楽な格好に着替えようとした。それも面倒だったので、シャツとズボンだけ脱いで
ベットに横になった。

あぁ、偶然とはいえ家にまで連れてきておいて、全くギラつけなかった。
もしかしたら女の子も期待していたかも知れない。
みんなに話したらばかにされるかなぁ、けどネタにはなるかなぁとウダウダしていた。
そうしているうちにやるせない気持ちが高まり、ツイッターで呟こうとiPhoneを手に取った。
と同時に、電話が鳴った。
さっきの子からだ！
To Be Continued...

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